宮下奈都さんの、本屋大賞受賞作、羊と鋼の森です。
学校の体育館にあるピアノを、調律師が調律し、音を作っていく課程や、ピアノから紡がれる音色に感動した主人公が、調律師となり、成長していく物語。
主人公は、物静かな性格であり、一見静かなタイプに思えるが、その内に秘めた音への思いの熱さに、気づけば引き込まれます。
ピアノの音色の描写が自然の風景を思わせ、本を読みながら、まるでピアノを聴いているような、それでいて、森の中を歩いているような、不思議な感覚にとらわれます。
答えのない音楽の世界を、一冊の小説として描き出してくれた本書に感謝します。