二十歳の原点

f:id:yumeyumebooks:20190427193112j:plain今からほぼ半世紀前、学園闘争真っ只中で二十歳にして自ら命を絶った高野悦子さんの手記です。

資本主義や安保に反対する学園闘争は、通常、所謂団塊の世代によって美化される風潮にあったことは否めない。

この考えは、ただ、往々にして過去が美化されるという風潮の
産物の一つに過ぎないのではないか。

彼女は学園闘争に関わりながら、一貫した立場を取ることが出来ない自己の不確実性から目を背けることなく、自己の内で葛藤を続けた。

自己の確固たる意見を声高に叫ぶことが正義であった大学内で、自己との葛藤は、どれだけ孤独な闘いであったのだろうか。

彼女は弱い。

あれほど自殺する人は弱いといっておきながら、彼女自身が自らを殺めてしまったのだから。

けれど、これはつまり自己の弱さ、エゴイズムから目を背けなかった彼女の強さの裏返しだ。

彼女の苦悩が、聡明さを匂わせる詩的表現で滲みでる。

その言葉の一つ一つが僕の心を打った。

心よりお悔やみ申し上げます。